変形性膝関節症と膝の痛み~膝蓋下脂肪体と膝蓋上嚢にも注目!

変形性膝関節症(Osteoarthritis, 変形性膝関節症)は、膝の軟骨がすり減り、炎症や痛みを引き起こす病気です。一般的には、関節の変形や軟骨のすり減りが原因として知られていますが、実はそれだけではありません。変形性膝関節症と診断されても、必ずしも変形そのものが痛みの原因とは限らず、ほかの要因が関与していることが多いのです。

実際に、臨床の現場では「軟骨がすり減っているから痛い」と説明されることが多いですが、実は変形の程度と痛みの強さは必ずしも一致しません。患者さんの中には、関節の変形が進んでいても痛みを感じない人もいれば、逆に変形が軽度でも強い痛みを訴える人もいます。このようなケースでは、膝の周囲の組織、特に 膝蓋下脂肪体膝蓋上嚢 の炎症が痛みの原因となっている可能性が高いのです。

私自身、日々の治療の中で多くの患者さんを診る中で、単に軟骨のすり減りだけでなく、膝蓋下脂肪体や膝蓋上嚢の炎症が痛みの主な原因となっているケースに多く遭遇します。そのため、こうした組織へのアプローチが、膝の痛みを改善するうえで非常に重要だと実感しています。

今回は、膝の痛みに関係する 膝蓋下脂肪体炎膝蓋上嚢炎 に注目し、痛みが起こる仕組みや対策についてわかりやすく説明します。


変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症は、膝関節のクッションである軟骨がすり減り、骨同士が直接こすれ合うことで痛みや炎症を引き起こす病気です。特に中高年の方に多く、進行すると関節の形が変わったり、動かしづらくなったりします。

主な原因

  • 年齢を重ねること:軟骨が弱くなり、すり減りやすくなる
  • 体重の影響:膝にかかる負担が増え、軟骨が消耗しやすくなる
  • 過去のケガ:膝のケガが原因で関節が弱くなり、症状が悪化しやすい
  • 筋力の低下:太ももの筋肉が弱くなると、膝を支える力が落ちる

主な症状

  • 膝の痛み(歩くときや立ち上がるときに痛む)
  • 関節のこわばり(特に朝起きたときに感じやすい)
  • 膝が腫れる(炎症が原因)
  • 動かしにくくなる
  • 膝の変形(進行するとO脚やX脚になることも)

研究結果

近年の研究では、変形性膝関節症の痛みの原因として、膝蓋下脂肪体や膝蓋上嚢の炎症が注目されています。

  • MRI検査では、変形性膝関節症の患者の多くに「膝蓋下脂肪体の炎症」が見られる。
  • 超音波検査では、膝蓋下脂肪体の「血流異常」が痛みの強さと関係していることがわかっている。
  • 膝蓋上嚢が厚くなると、膝の動きが悪くなり、さらに炎症が進むことが確認されている。

このように、膝の痛みは単なる軟骨のすり減りだけでなく、膝蓋下脂肪体や膝蓋上嚢の炎症が関与している可能性が高いのです。


膝蓋下脂肪体炎・膝蓋上嚢炎とは?

膝蓋下脂肪体炎(Hoffa病)

膝蓋下脂肪体は、膝のお皿(膝蓋骨)の下にあるクッションの役割を果たす脂肪組織です。膝の動きをスムーズにする働きがありますが、炎症を起こすと痛みが発生し、膝の動きに支障をきたします。

主な原因

  • 繰り返しの膝の屈伸動作(しゃがみ込み、正座、ランニングなど)
  • 膝への強い衝撃(転倒やスポーツ外傷)
  • 膝関節のアライメント異常(O脚やX脚など)

症状

  • 膝の前側に鋭い痛みが出る
  • しゃがむ、立ち上がる、階段の昇降で痛みが強くなる
  • 膝蓋下脂肪体周辺を押すと痛みがある
  • 膝が伸びきらない、違和感がある

膝蓋上嚢炎

膝蓋上嚢は、膝蓋骨の上部にある滑液を含む袋で、膝の動きを滑らかにする役割があります。炎症が起こると、膝が腫れたり、動かしにくくなったりします。

主な原因

  • 膝の過度な使用(長時間の立ち仕事、スポーツ)
  • 関節炎や感染症
  • 膝関節のアライメント異常

症状

  • 膝の上部に腫れや痛みが出る
  • 膝を伸ばす・曲げると痛みが増す
  • 運動後に症状が悪化しやすい

セルフケアの重要性

変形性膝関節症は進行性の疾患ですが、適切なセルフケアにより症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させることが可能です。​研究では、セルフケア能力が高い患者ほど、症状の管理や生活の質が良好であることが示されています。

<具体的なセルフケア方法>

適度な運動の継続

  • ウォーキングやプールでの歩行:​膝への負担が少なく、関節の可動域を維持するのに効果的です。
  • 太ももの筋肉を鍛える運動:​スクワットやレッグレイズなどで大腿四頭筋を強化し、膝関節を安定させます。

体重管理

  • 適正体重を維持することで、膝への負担を軽減します。

日常生活での工夫

  • 階段の昇降:​手すりを使用し、ゆっくりと行うことで膝への負担を減らします。
  • 正しい歩行姿勢:​膝をまっすぐに保ち、足全体で着地することを心がけます。

痛みの自己管理

  • 温熱療法:​温かいタオルや入浴で膝を温め、血行を促進します。
  • 冷却療法:​炎症が強い場合は、氷を使って冷やすことで痛みを和らげます。

サポーターの有効性

日常生活で膝への負担が多い方には、サポーターの使用が推奨されます。研究によれば、サポーターの装着により膝関節周囲の筋機能が効率よく促進され、痛みの軽減や身体機能の改善が見られたと報告されています。

サポーターの効果

  • 膝関節の安定性向上:​サポーターは膝関節を適切にサポートし、不安定性を軽減します。
  • 痛みの緩和:​皮膚への圧迫により触圧覚が刺激され、痛みの伝達を遅らせる効果が期待されます。
  • 保温効果:​膝周囲を温めることで血行を促進し、痛みを和らげます。

サポーター選びのポイント

タイプ:​症状や活動レベルに応じて、適切なタイプのサポーターを選択します。

フィット感:​きつすぎず、緩すぎないものを選ぶことが重要です。

素材:​通気性が良く、肌に優しい素材を選ぶと快適に使用できます。


まとめ

変形性膝関節症の痛みは、軟骨がすり減るだけでなく、膝蓋下脂肪体炎や膝蓋上嚢炎が大きく関係しています。日常生活で膝への負担を減らし、適切なセルフケアを行うことで、症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させることが期待できます。

膝のセルフケアは、適切な運動、体重管理、日常生活での工夫、痛みの自己管理が重要です。さらに、膝への負担が多い方は、サポーターの使用が有効であると研究で示されています。これらの方法を取り入れることで、より快適な生活を送ることができるでしょう。