
膝の靭帯損傷は、スポーツや事故などの外的衝撃、または過度のストレスによって膝関節の安定性が損なわれることで発生します。膝の靭帯には、前十字靭帯(ACL)、後十字靭帯(PCL)、内側側副靭帯(MCL)、外側側副靭帯(LCL)があり、それぞれ異なる特徴や治療法があります。今回は、これらの靭帯損傷について、どのような場面で発症するのかを含めて詳しく解説します。
膝の靭帯損傷が発症する場面
膝の靭帯損傷は、特に以下の場面で発症しやすいです
1. スポーツでの急激な動作
• 方向転換:サッカーやバスケットボールなどで、方向を急に変えると膝に過度の負荷がかかり、靭帯が損傷します。
• ジャンプと着地:バレーボールやバスケットボールでジャンプ後に着地する際、膝に強い衝撃が加わり、靭帯が損傷することがあります。
• タックルや衝突:アメリカンフットボールやラグビーなどの接触スポーツでは、衝突やタックルによって膝が強くひねられ、靭帯損傷が起こります。
2. 交通事故や転倒
• 車両事故や転倒事故で膝が過度に曲がったり、逆に膝が伸びたりすることで、靭帯に損傷が生じます。
3. 過度な運動や過剰なストレス
• 長時間の運動や不適切なフォームでのトレーニングによって膝に負担がかかり、靭帯損傷を引き起こすことがあります。
4. 加齢による靭帯の弾力性低下
• 年齢とともに靭帯が弾力を失い、通常の動作でも損傷しやすくなることがあります。
各靭帯損傷の特徴と治療法
- 前十字靭帯損傷(ACL損傷)
• 急激な方向転換や膝のひねり
サッカーやバスケットボールなど、瞬間的に方向を変える動作で多く見られます。膝が内側にひねられることで、ACLが断裂します。
• 「ポキッ」と音が鳴る感覚
ACL損傷では、靭帯が急激に引き伸ばされることで、膝で「ポキッ」と音がすることがあります。
• 膝の不安定感
ACLが損傷すると、膝の前方への動きが制御できなくなり、特に歩行や階段を登る際に不安定感を感じることがあります。
• 腫れと内出血
損傷部位に血液がたまりやすく、膝の腫れや内出血が見られます。
治療法
• 急性期:RICE処置(安静、冷却、圧迫、挙上)を行い、腫れを抑えます。
• 保存療法(軽度損傷):膝を固定し、リハビリを行い筋力強化や可動域訓練を行います。
• 手術療法(完全損傷や重度損傷):ACL再建術が必要な場合があります。
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- 後十字靭帯損傷(PCL損傷)
• 膝を強く前方に引っ張られる動作で発症
PCL損傷は、膝が強く前方に押し付けられる動作で発生します。たとえば、車の事故で膝がダッシュボードに強くぶつかった場合です。
• 後膝部の痛み
PCL損傷は膝の後部に痛みを感じ、膝を動かすと不安定感が増します。
• 膝の後方不安定性
膝を前後に動かすと、後方の不安定感を強く感じることが多いです。
治療法
• 急性期:RICE処置を行い、腫れを抑えます。
• 保存療法(軽度損傷):膝の安定性を保つためのリハビリが重要です。
• 手術療法(重度損傷):PCL再建術が必要となることがあります。
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- 内側側副靭帯損傷(MCL損傷)
• 膝の外側への衝撃
MCLは膝の内側に位置し、膝が外側にひねられる、または内側に強い衝撃を受けると損傷します。サッカーやラグビーなどの接触スポーツでよく見られます。
• 内側膝部の圧痛と腫れ
MCL損傷の症状は膝の内側に圧痛が現れ、腫れが発生します。
• 歩行時の不快感
膝を曲げる動作や歩行中に痛みを感じることが多くなります。
治療法
• 急性期:RICE処置を行い、痛みを軽減します。
• 保存療法(軽度損傷):膝を安定させるためのサポーターを使用し、リハビリを行います。
• 手術療法(重度損傷):靭帯再建術が行われることがあります。
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- 外側側副靭帯損傷(LCL損傷)
• 膝外側への衝撃
LCL損傷は膝の外側に強い衝撃が加わることによって発生します。転倒や接触スポーツで膝がひねられる動作が原因となることが多いです。
• 膝の外側部に強い痛みと腫れ
膝の外側に痛みが集中的に現れ、腫れが生じます。膝を動かすときに外側に違和感を感じることがあります。
• 膝を外側にひねったときの痛み
膝を伸ばしきったり、足を外側に回したりする動作で痛みが生じます。
治療法
• 急性期:RICE処置を行い、腫れと痛みを抑えます。
• 保存療法(軽度損傷):サポーターを使って膝を安定させ、リハビリを行います。
• 手術療法(重度損傷):LCL再建術を行うことがあります。
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まとめ
膝の靭帯損傷は、適切な治療を行わなければ長期的な機能障害や痛みの原因となる可能性があります。急性期に適切な処置を行い、その後のリハビリを通じて膝周りの筋力を強化し、関節の安定性を回復することが大切です。また、再発防止のためには、筋力トレーニングやストレッチを行い、膝にかかる負担を減らすことが重要です。
膝の靭帯損傷が疑われる場合や症状が続く場合は、早期に専門医の診断を受けることをおすすめします。