
変形性膝関節症の痛み、原因は変形だけではない!
膝に痛みを感じて整形外科を受診し、変形性膝関節症と診断されることは多いですが、実際に膝の痛みが関節の変形そのものであるとは限りません。膝周囲の筋肉、靱帯、腱が原因で痛みが生じている場合もあります。私自身、日々の治療の中で多くの患者さんを診る中で、単に軟骨のすり減りだけでなく、鵞足(がそく)や腸脛靱帯(ちょうけいじんたい)の炎症が痛みの主な原因となっているケースに多く遭遇します。以前の記事にて同じ題材で膝蓋下脂肪体や膝蓋上嚢について触れました。今回は「鵞足炎(がそくえん)」や「腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)」に触れていきます!この2つは膝の内側や外側に強い痛みを引き起こし、変形性膝関節症と混同されがちです。今回はこれらの症状の特徴、発症原因、そして予防やセルフケア方法について詳しく解説します!
- 鵞足炎(がそくえん)
鵞足炎とは
鵞足は膝の内側に位置する「三筋腱」の集合体で、半腱様筋、縫工筋、薄筋が合流する場所です。この部分は膝を屈曲する際に働く筋肉が集まっているため、過度な負担がかかると炎症を引き起こします。鵞足炎は、この鵞足部に炎症が発生した状態で、膝の内側に鋭い痛みが現れます。
症状と特徴
鵞足炎の特徴的な症状は、膝を曲げる動作(例えば、階段を登る、しゃがむ)や長時間の歩行で痛みが強くなることです。また、膝の内側、特に鵞足部に触れると痛みが増します。長期間放置すると、膝の動きに制限がかかり、日常生活の質が低下します。
発症原因
鵞足炎の主な原因は、筋肉や腱にかかる過度な負担です。特に膝をよく使うスポーツ(ランニング、サイクリングなど)や、膝を内側にひねる動作が多い場合、筋肉の疲労が蓄積し、炎症が発生します。また、股関節や足首の柔軟性が不足していると、膝に不適切なストレスがかかりやすくなります。
セルフケアと予防法
• アイシング:炎症が強い場合、アイスパックを膝に当てて冷やすことで、炎症を抑えることができます。痛みがひどいときは、1回20分を目安に冷却します。
• 休息と運動の調整:膝を使いすぎないようにし、スポーツや運動を行う際には負荷を調整しましょう。特に、膝を曲げる動作を頻繁に行うことを避けると効果的です。
• ストレッチと筋力トレーニング:股関節、太ももの筋肉(特に内転筋や大腿四頭筋)やハムストリングスのストレッチを行うことが重要です。また、大腿四頭筋を強化することで膝にかかる負担を減らし、鵞足へのストレスを軽減できます。
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- 腸脛靱帯炎(ちょうけいじんたいえん)
腸脛靱帯炎とは
腸脛靱帯は、骨盤から膝の外側にかけて伸びる非常に強い靱帯です。この靱帯は、特にランニングやジョギングなど、足を頻繁に動かす動作で重要な役割を果たします。腸脛靱帯炎は、この腸脛靱帯が膝の外側にある骨(大腿骨)に擦れることで炎症が生じ、膝の外側に痛みを引き起こす状態です。
症状と特徴
腸脛靱帯炎の痛みは、膝の外側、特に膝を曲げたり伸ばしたりする際に強く感じます。ランニングや歩行の際に痛みが強くなるのが特徴で、膝を完全に伸ばしたり曲げたりしたときに、腸脛靱帯が骨に擦れて炎症が悪化します。また、膝を外側にひねるような動作でも痛みが増すことがあります。
発症原因
腸脛靱帯炎は、膝に繰り返し負担をかけることで起こります。特に、ランニングや自転車運動を長時間行うことで、靱帯に過剰な圧力がかかり、炎症を引き起こします。膝が内側に倒れたり、過度な外旋を繰り返す動き(膝が外に開くような動き)が原因になることもあります。また、足のアライメント不良や過剰な体重も関与する要因です。
セルフケアと予防法
• ストレッチ:腸脛靱帯を中心に、大腿筋膜張筋(ITバンド)のストレッチを行います。これにより、腸脛靱帯の緊張を和らげることができます。ストレッチを行う際は、少しずつ柔軟性を高めるようにしましょう。
• フォームの見直し:ランニングや歩行時のフォームが悪いと、腸脛靱帯に過度な負担がかかります。膝を真っ直ぐ保つように意識し、歩幅や姿勢を改善することが予防につながります。
• 筋力強化:特に、大腿四頭筋や臀部の筋力を強化することが大切です。膝の安定性を保つことで、腸脛靱帯への負担を減らすことができます。
サポーターの有効性
日常生活で膝への負担が多い方には、サポーターの使用が推奨されます。研究によれば、サポーターの装着により膝関節周囲の筋機能が効率よく促進され、痛みの軽減や身体機能の改善が見られたと報告されています。
サポーターの効果
- 膝関節の安定性向上:サポーターは膝関節を適切にサポートし、不安定性を軽減します。
- 痛みの緩和:皮膚への圧迫により触圧覚が刺激され、痛みの伝達を遅らせる効果が期待されます。
- 保温効果:膝周囲を温めることで血行を促進し、痛みを和らげます。
サポーター選びのポイント
タイプ:症状や活動レベルに応じて、適切なタイプのサポーターを選択します。
フィット感:きつすぎず、緩すぎないものを選ぶことが重要です。
素材:通気性が良く、肌に優しい素材を選ぶと快適に使用できます。
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まとめ
変形性膝関節症と診断されても、その痛みが必ずしも関節の変形によるものだけとは限りません。鵞足炎や腸脛靱帯炎など、膝の周囲の筋肉や靱帯に問題があることも多いため、膝の痛みを軽視せず、正しい診断と治療を受けることが大切です。日常的なセルフケアや予防法を取り入れ、筋力トレーニングやストレッチを行うことで、再発防止につながります。膝の痛みが続く場合は、早期に専門医に相談し、最適な治療を受けることをおすすめします。